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宮島競艇場で今、爆発の瞬間が待ち望まれる男。吉本玲緒、28歳。宮島競艇場では3人目となる第54代本栖チャンピオンの称号の持ち主でもある。
瀬戸内海に臨む佐伯郡大野町(現廿日市市)。宮島競艇場のあるこの町で生まれ育った吉本は幼少から父親とレース観戦に来ていた。競艇選手になることを決意したのは周りより一足遅い20歳のとき。年齢制限は21歳。リミットまであと一年と迫る中、試験は一発で合格した。そして卒業記念競走で優勝。本栖チャンプとして鳴り物入りで地元デビューを果
たすと、初出走初勝利の快挙も成し遂げた。
吉本にとってこの一走は最も心に残るものでもある。01年11月13日、デビュー戦本番出走前。吉本は師匠の西島義則選手からある助言を受けていた。『わしはデビュー戦の時、出走表を見て負ける気がせんかったで』。同じく出走表に目をやる。「ホントだ、これは勝てる!」。やる気と自信に満ち溢れた吉本は勝利を確信した。6コースからトップスタートを切ると、1周1マークの3位
航走から粘りある走りで徐々に追い上げ、一着でゴールイン。本栖チャンプの名にふさわしい走りを披露した。
その秘めたる才能の持ち主も、デビューから今年6年目を迎えた。だが、A級への昇格はまだない。6年前の吉本は、今の自分に欠けているものを確実に持っていた。それは全身全霊をかけてレースに臨む闘志だ。「あの時はやる気に満ちていた」と、自らも承知の所。先輩からも気持ちを前面
に出すことを指摘されることもある。だが、この現状に焦りや不安は微塵もない。「ガツガツいく必要もあるかもしれない。けど、人は人。俺は俺のペースで走る」。それは着実に積み上げてきた成果
があるからこそ言えることだ。デビュー後2年間は3点台だった勝率もその後大崩することなく4点台を維持。07年前期、自己最高の19勝を挙げると、今季はすでに3度準優勝戦に進出。勝率も5.04と初の5点台に突入し、A級最低ラインまで0.26と迫る(7月30日現在)。遠回りはしているかもしれない。だが焦らず気負わず「マイペースで」。その安定した走りで吉本は刻一刻とA級に近づいているのだ。
本番出走直前、右手で勝負服の胸元をギュッとする。その下に光るのはお守りのペンダント。それを握り、家族を思い出してレースに挑むと言う。吉本には二人の子供がいる。「レースへ行く前に頑張れって言ってくれる。もう慣れちゃいましたけど」とは言うものの子供からの応援には頬が緩む。優しいパパだ。艇界に足を踏み入れて以来支えとなってきた存在。愛する家族のためにも、これ以上B級でくすぶるわけにはいかない。
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