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宮島競艇場にモトオカカツトシという若き水上の戦士がいる。その名を「勝利」と書く。03年21歳の時、地元宮島で艇界の門を叩いた。現在は自身初のA級昇格に本腰を据え、B1級で奮闘の日々を送っている。
強くなりたい――。本岡の07年は固い決意と共に幕を開けた。10月9日現在、一着数11は05年後期の自己ベストタイ、勝率も過去最高の4.72をマークしている。奮起の裏には理由がある。「一緒に遊んできた後輩が追い上げてきて負けたくなかった。それに5年間も走ってきてまだ一度もA級に上がったことがない。これじゃ駄
目だと感じた」。
本岡は初のA級昇格を目指し、最大の課題である旋回能力の向上に取り組んだ。「今まではターンマーク付近に少しでも波があると、全速で旋回したら転覆するかもと、しれずにバーを離すことがあった。レース後、ピットでリプレイを見ても『全速で回っていれば勝てたはず』と思うことが多かった」。競艇は1周1マークで大方の決着がつく。そこで誰よりも速く鋭いターンを決めなければ勝機は見えてこない。本岡はまず、ターンしやすいプロペラを作ることから始めた。展示航走から本番出走までのわずかな時間にもプロペラ調整に専念し、納得いくまで何度も調整を繰り返した。その結果
、回りやすく掛かりも良い旋回ができるプロペラ調整に磨きがかかり、4月に下関で行われたレースから3節連続で準優勝戦進出を果
たした。
そして全速ターンを習得するため、地元宮島の先輩レーサー・能仁政治選手に師事しながら、技術面
にも磨きをかけてきた。確かな手応えを感じたのは9月、丸亀のレースで一着1回二着2回三着1回と好成績を残した時のことだった。「ハンドルを切るタイミングを遅くする、というアドバイスを受けてから他艇の動きがよく見えるようになった。今までは旋回時に隙間が空いていればそこを通
ってきた感じだけど、丸亀のレースでは違った。他艇の動きを把握した上でここだ!
という所を抜けられた。少しだけど、勝つための旋回の感覚が身に付いてきた気がする」。わずかながらも、本岡は目標達成に向け確実に前進している。
それでも選考期限の10月いっぱいでA級昇格最低ラインの5.35に至るには厳しい状況だ。だが、本岡はその現状を真摯に受け止めている。「自分の中ではA級昇格のためにクリアすべきことが沢山あって、今すぐ昇格できる力はない。だけど、最低でも新鋭リーグ(※)卒業までにはA級で走れるようにする」。本岡に残された時間は、あと1年と2ヵ月。その揺るぎない決意を胸に秘め、ただ「勝利」を求め走り続ける。
※新鋭リーグ:デビューから6年目未満の選手(男子のみ)が出場できるリーグ戦。毎年1月に行われるG1新鋭王座決定戦への出場を目指し、若き水上の戦士たちが熱い戦いを繰り広げる。
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