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現在、艇界には1,482人のレーサーがいる。その内、女子選手は138人と少数で、A1レーサーとなればその数11人(※1)。更に最高峰のレースSG戦に出場するのは一握りの選手と女子にとって艇界で結果
を残すことは難しい。
性別も年齢も一切関係ない、その過酷な勝負の世界に生きる若き女子レーサーが宮島競艇場にいる。菅野はやか、25歳。04年、広島支部では6年ぶりの女子選手としてデビュー、現在はA1級への昇格を夢見てB2級で奮闘している。
菅野の武器は打たれ強さ。「怒られても落ち込んだ表情は見せないし、人前では絶対泣かない」。それは水上でも同じだ。前走で最下位
に終わろうが菅野は水面に姿を現し、何度も試運転を繰り返す。その姿は勝利を求め着々と努力を重ねる芯の強さを感じさせる程。
だが、そんな彼女もたった一度だけ人前で泣いたことがある。今年7月、丸亀で行われた女子リーグ戦第5戦。レースを終え宿舎に戻った夜、広島支部の先輩でSG出場経験もある海野
(うんの)ゆかり(※2)からレース結果
について指摘を受けた時のことだった。菅野は先輩の目もはばからず泣き出した。デビュー4年目ながら、B1級にさえ昇格できない意識の弱さ、艇界のトップを走る先輩の助言も甲斐なく、レースに勝てない甘さへの苛立ち。そして憧れの先輩に何度も同じことを言わせることへの申し訳なさ。「海野さんは本当は厳しいことは言いたくない人だって分かっている」。だが、強くなってほしいからこそ、先輩は敢えて菅野にこう言った「もっと自信を持ちなさい。思いっきり握っていけば絶対勝てる力はあるんだから。怒ってるんじゃない。はやかがかわいいから」。奮起を促すその言葉に、鬱積してきた自分への悔しさが涙となって溢れた。そして彼女の心を奮い立たせもした。もっと頑張らなきゃ…。
以来成績も2、3着に絡むことが僅かに増えてきた。「少しずつだけど自分のレースができるようになってきた。自分らしい走りは、
迷わず大外から全速で攻めていくこと」。思い切りの良さこそ彼女の持ち味。それが発揮された時、必ず勝機は見えてくるはずだ。
菅野には夢がある。「ドリーム戦(※3)でトップの選手と走ってみたい」。それは背中を追い続けてきた人・海野と同じ舞台で競い合うことでもある。「勝つにはペラの調整や旋回技術など課題は山積みです」と立ち位
置をしっかりと把握している。だが鋭い目線で尚もこう続けた。「必ずドリーム戦に乗ってやるという気持ちで走っています」。過酷な勝負の世界に生きる25歳。夢見る彼女は、もう泣かない。ドリーム戦の舞台で勝利する、その日まで。
※1:07年5月1日〜07年10月31日の期間中
※2海野ゆかり選手:広島支部の女子レーサーで、04年G1女子王座決定戦で優勝。SG戦への出場経験もあり、男子選手に引けをとらない強気の走りと「水上のタカラジェンヌ」の異名を持つ程の端正な顔立ちで人気。
※3ドリーム戦:レースに出場する選手の中から人気実力共に選りすぐられた6名の選手によって争われるレース
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